周知のように、わが国における細菌性赤痢や腸チフス・パラチフスといった消化器系の感染症は、患者・保菌者に対する感染源対策の徹底、上下水道の整備など衛生環境の改善などに伴い近年激減した。しかし、食品衛生上いわゆる食中毒として取り扱われる疾病、特に細菌性の食中毒の発生状況には一向に改善の兆しが見られない。一つには、全国における食中毒に関するサーベイランスや検査体制が整備され認識される事例が多くなったことにもよろうが、実質的にもあまり現象していないのではないかと思われる。そしてその原因は近年における給食の普及・規模の大型化、外食人口の増加、調理・半調理済食品の普及、食品供給のグローバル化などわれわれを取り巻く食環境の変化とも無縁ではなかろう。(「はじめに」より)