脳磁図は脳波とともに皮質神経活動を計測する方法であり、血行動態を計測するPETや機能的MRIに比べ時間分解能が高く、msオーダーで変化する神経活動を捉えられる。脳磁図で計測される磁場は、微弱であるが、生体組織の比透磁率がほぼ1に等しいことから、信号源となる錐体細胞の尖樹上突起に流れるイオン流から発生する磁場が、組織によって歪められることなく計測可能であり、計測された磁場分布から脳内の信号源を推定する際の誤差を小さく抑えられる。したがって、脳波ではなく脳磁図によって脳機能を解析する主眼は、時間特性というよりむしろ信号源推定、すなわちどこが活動しているかということに置かれてきた。しかし、潜時の短い誘発応答の場合には、信号源の推定は比較的うまく行くが、300ms以降の活動についてはかなり難しく高次脳機能を脳磁図により調べる際には、誘発応答の信号源推定という、これまでお決まりの解析方法とは異なるアプローチが望まれる。(「はじめに」より)