生体組織工学に必要な要素は、細胞、細胞の増殖分化のための足場、および細胞増殖因子である。細胞の足場のデザインと作製は大切であるが、足場がいかに優れていたとしても、再生部位に必要な細胞の数が少なかったり、細胞を増殖分化させる生体因子の濃度が低すぎたりすれば、望む生体組織の再生は起こらない。そこで、必要となるのが細胞増殖因子である。ところが、生体内で不安定で、しかも作用部位の特異性もない。細胞増殖因子や遺伝子を利用して、その再生効果を得るためにはドラッグデリバリーシステム(DDS)技術が不可欠である。従来、DDSは薬物治療のイメージが強く、再生医療とは無関係であると考えられてきたが、細胞増殖因子あるいは遺伝子の濃度を必要な場所で必要な期間にわたって有効値に保つためのDDSという視点からながめ、生体組織工学では中核技術である。本特集は、再生医療をDDSという視点からながめ、組織再生療法を目指したフロンティア技術としてのDDSの重要性を広く認識していただくことを目的として企画しました。(「巻頭言」より)