出版社: | ワールドプランニング |
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発行日: | 2002-08-20 |
分野: | 臨床医学:内科 > 雑誌 |
雑誌名: | |
特集: | オールディストオールド |
「高齢化」は現代の日本社会を特徴づけるキーワードのひとつである。老いや高齢者問題が今日ほど注目されたことはかつてなかったし、人々は人口高齢化の行方を注視している。しかし、現在の老いへの注目は、恐れと不安に由来するものでしかない。人々が老いを恐れ、人口高齢化の進行を危惧しているがゆえに、老いがクローズアップされているのである。有史以来、長寿は万人の願いであり、親は子の、子は親の長命を願ってきた。長寿はまさに、寿(ことほぐ)ぐべきことで、還暦、古稀、喜寿などの長寿を祝う習慣が今日に伝えられている。伝統的に日本では、老いにはプラスのイメージが付されていたといってよい。たとえば江戸幕府の官職では、『大老』が最高位で、次が『老中』、その次が『若年寄』であった。その意味では、平均寿命が伸び、ほとんどの人が高齢者になれる社会、その結果として高齢者が増える社会の到来は、本来は喜ぶべきことだったはずである。ところが、人類未踏の長寿社会を実現した現在の日本では、長寿の価値は下落し、老いは忌むべきものとなっているようである。