高齢社会の到来により、理学療法対象者も高齢者、高齢障害者が大部分を占めるようになってきました。国の制度も高齢社会に向けた対策として公的介護保険の創設、医療制度改革等が実施される等、高齢者医療・福祉の早急な整備は大きな課題となっております。その整備課題にはリハビリテーションの充実があり当然理学療法へのニーズも急速に高まっております。このような状況で、高齢者の理学療法は十分に対応できているかを考えるといささか疑問が残ります。つまり、制度上は理学療法士や理学療法の位置付けはなされても、高齢者の特性を考慮し、リハビリテーションの時期に合わせて各種施設・在宅サービス等で理学療法が展開されているかであります。ややもすると、制度の流れに押し流されて理学療法の本質を見失っている理学療法士の方も多いのではないでしょうか。そこで本書では、理学療法の本質となる高齢者の特性や高齢者の障害と理学療法の展開方法等の知識を紹介することで、臨床の理学療法の専門性に厚みを増していただきたいと思います。(「編集にあたって」より)