筋骨格系の医療に携わる臨床家は、自分たちの知識や指導法を向上させるために常に進歩した新しい知見や分析を捜し求めている。TravellならびにSimons両博士によって筋筋膜機能障害が初めて紹介されてからまだ20年経っていないが、すでに新しい検査法や治療法の主要な対象になっている。ただし、筋の損傷が起こる場所やメカニズムがまだ完全に明らかにされているとは言えない。本書の著者は、筋骨格系機能障害が見られる患者の検査ならびに治療について、いくつかの貴重な洞察を行っている。その診断、検査に「損傷の生体力学」という概念を採り入れたことは臨床家に対する大きな貢献であり、この分野におけるこれからの研究の方向付けに有益だと思われる。KostopoulosとRizopoulos両氏の考え方に従った体系的な取り組みは、機能障害に陥った筋の治療にも生かされる。薬理学的な見方からすれば、筋筋膜機能障害に陥った1つの筋をストレッチして治療する範囲はごく限られていると言える。「ストレッチ陽性サイン」に気付かせながら、患者に副作用がある可能性について忠告するのは分りやすいし、プラスの効果を生むには欠かせないことである。(「推薦の辞」より)