「50の手習い」という言葉がふと浮かんだ。そういう私も数えで50になる。もちろん最近までこの言葉とは無縁で、まったく他人事でもありました。なんの趣味らしい趣味もなくこの年まできてしまった私ですが、実は習い事でもと思って「手習い」が出てきたわけでもありません。義歯作りをはじめてもう22年もたとうとしているのに、日常の臨床では一からもう一度やり直さないと、と素直に反省させられることが結構あります。つまり患者さんに喜んでもらえないという大きな壁につきあたってしまうので、「50の手習い」を義歯についても始めなさいということなのかも知れません。したがいまして、本著を御購入いただいた皆様には大変申し訳ないのですが、そんな私が書いたものなので、長い?臨床の中から得たこれだという義歯づくりのエッセンスをまとめたものにはなっておりません。でもこの本を読破されましたら、あきらめないで患者さんが納得してくれるような義歯作りのチャレンジができる自分を発見することになる、と確信しております。「このヘタクソー」などと大声を出したり、ニガ笑いをしながら、「そんな失敗ワシはセン。まだ若いな!!」ときっと思われ、ページをめくるられることでしょう。(「まえがき」より)