「心血管事故(イベント)」である冠動脈性心疾患や脳血管疾患は、運よく即死をまぬがれたとしても、完治させることのできない疾患である。しかしながら、かなりの割合で発症そのものを「抑止」することのできる疾患でもある。冠動脈性疾患に対するカテーテル治療や冠動脈バイパス手術等は、死期を何年か追いやることができたとしても、「姑息治療の域」を出るものではない。このことの認識が最も重要かつ本質であり、それだけに発症そのものを「抑止」、あるいは再発させないことこそが、あらゆる治療に勝るのである。つまり、ひとりでも多くの患者さんを、どうしたらカテーテル室や手術室に来させないようにするかが本書の眼目なのであり、それは取りも直さず循環器外来における患者指導を従来考えてきた以上に重視すべきだということである。