本書は1999年11月にベルリンで開催された世界体育サミットの報告書を日本体育学会の責任において翻訳したものです.世界的な規模での教科体育に関する調査研究の結果と,体育にかかわる諸科学者からの「体育の危機」を克服し「優れた教科」として発展させていくことの重要性を啓発するキーノートレクチャー,さらには関連会議資料から構成されています.わが国においては,必修という制度に守られてこれまでそれなりの位置を得てきた学校体育ではありますが,今後果たしてこれまでの位置を保つことが出来るのかを危惧する声も聞かれますし,現実に授業時間数の削減という事態は起こっています.体育はこれからの社会においてこれまで以上に重視されるべき極めて重要な教科であるからこそ,「危機」と正対し,優れた実践を通して,「優れた教科」としての位置を獲得していく努力がわが国においてもはじめられなければなりません.