神経眼科の最新の進歩をみることは,とりもなおさず,「快適で質の高い視覚を得るための機構とその異常」に光を当てることである。視覚情報は,網膜,視神経から外側膝状体,そして第一次視覚中枢,さらには高次視覚中枢へ至る視路を通して伝達処理されており,ここは神経眼科の一大関心領域である。しかし,この視路さえ健常なら,本当に「快適で質の高い視覚」が得られるのだろうか? 答えは否である。ヒトは,快適にものをみるためのさまざまな機構を有している。共同性,非共同性の眼球運動はもとより,たとえば,瞬目,瞳孔運動,調節などは,みなそれぞれ快適な視覚を得るために大きな意味を持つ。そこに起こるさまざまな異常が,どのような手段で評価され,解明され,治療されるべきかを示すのが,本書の主題である