わが国の少子高齢化による急激な人口構造の激変とともに,疾病構造の変化が顕著である.とくに女性では平均寿命が延長し,いわゆる狭義の更年期障害,高脂血症,骨粗鬆症などに対する予防,治療はわれわれ産婦人科医にとって重要な課題である.米国でジェンダーを意識した,gender specific medicine が提唱され,その一環としてWomen's Health Initiative(WHI)のプロジェクトが施行されてきた.本年8月,米国国立衛生研究所(NIH)で行ったWHIの大規模臨床試験の成績でエストロゲンとプロゲスチンの併用によるホルモン補充療法(HRT)において冠動脈疾患の一次予防を目的として開始すべきでなく,現在これのみを主たる目的で本HRTを行っている場合には継続すべきでないとの結論を報告した.日本産科婦人科学会,更年期医学会はこれを受け見解を発表したが,そのなかで更年期のヘルスケアは食事・運動・栄養などの生活習慣の適正化であり,それで十分効果のみられない場合には薬物療法を行う.またHRTの薬物療法は1つの選択肢であると述べている.更年期障害の治療というとすぐHRTを開始するのではなく,女性の精神,身体機能の評価を行い,必要に応じて各種の薬物療法が検討されるべきである.その薬物療法のひとつとして漢方の処方があげられる.中国やわが国で行われている療法はジェンダーを取り入れた思想の下に女性に特化した,当帰芍薬散,女神散,加味逍遙散などが開発され使用されてきている.(巻頭言より)