フロレンス・ナイチンゲール がその生涯に書きのこした手紙の数は 1万数千通にも のぼるといわれており、その大半が現在も まとめて保存されている。ただし、ここでいう 書簡( Address )とは、聖トマス病院およびナイチンゲール看護婦訓練学校の看護婦と見習生とに宛てられた公式の教書ともいうべきものであり、いわゆる書簡というより、むしろ著作と呼ぶに ふさわしいものである。大英博物館の図書室に眠っていた未刊の書簡も含め、14通 すべての書簡の原文を入手できたのを機に、これら全書簡を訳出し、『ナイチンゲール著作集』第3巻(現代社に収載したのであるが、この書簡のもつ重要性と読者の便宜とにかんがみて、特にその中の8通を選んで別冊としたのが本書である。