本書は、千葉大学看護学部における著者の「看護学原論」の講義を系統立てて編纂したものである。「看護学」の対象は看護実践そのものであり、看護実践の内部に目を転じてみれば、その対象は人間である。著者は、看護者としてある個人に向かいあったとき、その人の健康状態がどれほど多くの自然的・社会的現象とつながっているか、またその時の状態がどういう状態から変化してきたのか、といった見つめ方を訓練しておくことの必要性を述べている。そうして看護者としての対象のみつめ方が定まると、事実のもつ理論がみえてくるのである。著者による「看護学原論」の講義は、著者が「学問とは何か?」をふまえて、自らの実践の中からたぐりとり構築した看護学を体系的に提示したものであり、対象の構造を見ぬく論理能力を鍛えるための学的訓練を主体として構成されている。