生物とはなにか,生物を非生物から区別する性質はなにか,ということを考えるときに,真っ先に頭に浮かぶのは,「細胞からできている」ということである.細胞は組織や器官,そして個体をつくるもとであり,しだいに複雑になる段階ごとに新しい性質が表れる.近年細胞の研究は格段に進展した.顕微鏡などの機器の進歩や,急速に発展する分子生物学が,少し前までは想像もできなかったような細胞の姿を私たちの前に示している.また,細胞のはたらきと病気の驚くべき関係も明らかになり,そのいくつかは本書の中にも出てくる.さらに,細胞治療やiPS細胞まで,最新の話題にも触れられている.本書から,細胞の新しい姿を知っていただければ幸いである.