目次
- 脳科学と心の臨床
―目次―
第1章 ハードウェアとしての脳──イントロダクション(1)
「ハードウェアの摂理」/「ハードウェアの摂理」を忘れた「メンタリズム」/いよいよ脳科学の話である/「ハードウェアの摂理」の解明を待てなかったフロイト/怒りやうつに関するメンタリズム的説明/ハードウェアの摂理の先駆け/「脳を包む髄膜というハードウェア」の摂理/心理療法への応用
第2章 心と脳の歴史──イントロダクション(2)
心と脳の歴史を少しだけ/脳について何も分かっていなかった素朴な時代──心とは「霊魂」であった/魂の理論が流体仮説に移行する時代/心が脳の活動であることを受け入れるようになった時代/脳の構成要素が神経細胞であることが分かった時代/心理療法への応用
第3章 脳という小宇宙──イントロダクション(3)
大脳皮質は小銀河である/脳の大まかな構造/心理療法への応用
第4章 左脳は屁理屈,右脳はあまのじゃく
胡桃の実と脳とは違う/右脳と左脳をめぐる研究の歴史/脳梁切断と,ケンカをする左右の脳/左右の脳はどのような「対話」をするのか?/左右の前頭葉は別の種類の感情をつかさどるのか?/半側無視の不思議/実に不思議な病態失認/心理療法への応用
第5章 前頭葉という「心の宿」
前頭前野は「その人らしさ」を形成する/前頭葉の役割は統合であり執行である/いわゆる「高次脳機能」/どうしても語らずにはいられない症例──フィネアス・ゲージ/前頭前野は「角の内側」にある/DL──注意に基づく決断の部位/OF──情緒的な情報に関する決断/AC──母性の源/心理療法への応用
第6章 闘争,逃避を支える扁桃核,青斑核
最新のロボット犬はまだアメーバ以下である,悪いけれど/「我逃げる,ゆえに我あり」/扁桃核──逃避反応のパワーハウス/「へび細胞」,「スイカ細胞」/へびの「まるかじり」さえしてしまうサル/「恐れの回路」について──「速い経路」と「遅い経路」/心理療法への応用
第7章 記憶を支える脳のメカニズム
脳のネットワークについてのたとえ話/忘れていく記憶は「普通の記憶」である/記憶には「頭の記憶」と身体の記憶がある,と覚える/「頭の記憶」と「身体の記憶」がバラバラになると「忘れられない記憶」になる/心理療法への応用
第8章 海馬──「頭の記憶」の製造工場
海馬がつくる「頭の記憶」/海馬の働きについてのたとえ話/サバン現象と海馬──天才児はなぜすべてを覚え,しかも忘れないのか?/心理療法への応用
第9章 扁桃核や小脳──「身体の記憶」の生産工場
記憶の大前提──感動をともなった体験は,より強く記憶される/あまりに強い扁桃核の興奮は海馬の働きを抑えてしまう/心理療法への応用
第10章 うつ病を脳の病気としてとらえる
うつは正常な反応でもありうる/「心のうつ」と「脳のうつ」/うつの「原因」と「きっかけ」は異なる/そこでその誤解とは?/「誤解」を維持するのは,大衆のエゴか?/うつ病はなおも誤解されつづける/心理療法への応用
文献/最後に/人名索引/事項索引