本書は現代クライン派を代表する分析家J.シュタイナーの名著『こころの退避』の続編,応用編にあたり,この「退避」から抜け出すときに患者が体験する〈恥〉や〈屈辱〉体験の臨床的な重要性を深い水準で論じている。また本書は,エディプス葛藤についての再考,うつ病論,死の本能論などを包括的に論じ,英国クライン派の理論を革新的に発展させたものとなっている。読者は「病理的組織化」を鍵概念にクライン派分析理論全体を見渡すことができる。豊富な臨床例には分析者と患者との関わりあいが生き生きと詳細に記述され,文章は平易ながら鋭い臨床的考察を失わない。精神分析を学ぶ人,実践する人,関心のある人にとって必読書である。