近年,発生生物学は,細胞組織の培養技術やバイオテクノロジーの発展により,特に分子的な面を中心に飛躍的な進歩をとげている。本書は,こうした現状をふまえ,『脊椎動物発生学』(久米又三編)の構成を踏襲しながら全面的に記述を新たにし,今日にふさわしい基礎発生生物学の参考書として集大成をはかったものである。執筆者には日本のトップクラスの発生生物学の研究者があたり,我が国における研究を中心に,正常発生の基礎事項から最新の研究成果までを豊富な図・写真を用いてわかりやすく解説している。発生実験に欠かせない種を網羅し,ヒトを含めた脊椎動物の初期発生から器官発生までを詳説してあるので,理系の生物学研究者のみならず医薬学系・農学系の研究者にとっても大変有用であり,学術的意義,内容ともども世界に誇りうる発生生物学書の決定版である。