節足動物の「微小脳」は、われわれ霊長類の「巨大脳」と比べればはるかに小数のニューロンから構成され、また多様な外部環境に適応するための固有な機能を発達させているが、ニューロンの動作原理や高次機能の機構において、共通点も多い。そのため、行動と神経活動の関連など脳機能の基礎を解明するうえで、微小脳研究の意義はきわめて大きい。本書は、微小脳について解明された知見や今後の研究の視点を、脳機能の分子機構、記憶・学習、社会行動、知覚、工学的応用など、多彩な話題を取り上げて解説している。微小脳のみならず、巨大脳の生物学的理解を深めるうえでも大いに役立つユニークな書である。