20世紀精神分析の根幹を刷新し、現代思想の展開に革命的な影響を与えたラカンが公刊した唯一の論集『エクリ』は、一方でまた難解極まりない著作として読者の前に高くそびえていました。本書は、その『エクリ』の核心であるいわゆる〈ローマ講演論文〉を彫心鏤骨の訳文と詳細な訳注とでわが国の読者に提供する待望の新訳です。「無意識は一つの言語活動として構造化されている」というラカン思想を貫くテーゼが、精神分析の革命とも言うべき〈短時間セッション〉の実践的論理の内に息づいています。読者は本論文=本書において、ラカンの理論的練り上げの不変の軸と、その独自の実践を支える論理とが、見事に一つにまとまって呈示されているのを見ることができます。