解離とは不思議な概念であり,通常にも見られる心の働き,つまり正常範囲の防衛機制として捉えられることがある一方で,深刻な精神障害を来す病理的な現象とも考えられる。そしてその深刻な解離現象は多くの大脳生理学的な変化を伴い,それが近年の画像技術の進歩とともに多くの研究を生んでいる。そうした生物学的な研究は日進月歩であるが,個々の研究をみるとその方向性はかなり異なり,それこそ「解離」した状況にある。本書は著者が日々の臨床に携わる中で解離に関連したさまざまなテーマの統合を図り,かつそれを臨床に生かすことを目的とする。そこから浮かび上がる解離の姿は,依然として多くの謎や不明な点を含みながらも,心がさまざまな視点からのアプローチを必要としているという現実を示唆しているともいえるのである。