無治療を選んだ脳神経外科医が、試行錯誤のすえ、低用量抗がん剤と食事療法で末期がんから生還。なぜ、進行がんから寛解に至ったか、具体的にその医学的根拠を解説する。
投稿者名:ドンちゃん【投稿日:2019/03/20】
脳外科医として猛烈に働いていた著者が、妻と二人で老後に新規開業を思い描いていた矢先、妻に事故で先立たれ、数年後、尿管癌を発症し、医者とはいえ専門外で、必死に治療法や食事療法を勉強、生活支援ネットワークを作り上げてステージ4から緩解に至る闘病記です。私は看護師ですが、自分の周りにも癌で亡くなる医師は少なくなく、自分の専門分野の癌で亡くなった人もいます。やはり医師として病気を診るのと、自分の病気と付き合うのは違うのかなと思います。父が肝臓癌の末期と診断された時、この本に出会いました。父は医者ではありませんが、医者任せにしたら助からないという主義で、主治医の説明に言葉を返したり、父が痛み止めのパッチを使用しなかったことを咎めた看護師を叱ったり、入院中、医療者としてはハラハラする言動が多々ありました。でもこの本を読んで、自分が病院側に気遣って、父を理解していなかったなと気づかされました。著者は「痛みで戦う意欲を取り戻した」「術後の鎮痛剤を止めて、痛みを感じながらリハビリした」と書いていますが、父も「痛みは生きている証、痛みで病気の進行がわかる」と言っていました。医療者は「痛みをがまんさせない」ことを第一に考えますが、痛みにはそれぞれの意味があるのだと、改めて一人一人に向き合う大切さを痛感しました。また、父の癌を治す食事療法についても色々本を読みましたが、実際に家族が出来ることには限りがあって、この著者の「完璧にしようとして諦めるより、できることから」という姿勢に救われました。医師をはじめ、看護師、看護学生にも広く読んで欲しい本です。