心臓は自律神経支配が濃密な臓器であり、主としてアドレナリン作動性β1受容体(一部β2受容体)、およびコリン作動性ムスカリンM2受容体を介する、著明な陽性および陰性心臓反応が知られている。自律神経系の交感ならびに副交感(迷走)神経における古典的な化学伝達物質としては、各々ノルアドレナリン(NA)とアドレナリンもしくはアセチルコリン(ACh)で代表され、これまで神経伝達物質の主役として認知されている。しかし、現在では他にも数多くの生体内活性物質が神経伝達物質あるいは調整物質として認知されるようになった。いわゆる非アドレナリン非コリン作動性伝達物質と称されるものである。生体内神経物質としては、生体アミン類、プリン類、ペプチド類、NO等多数多くのものが認知されている。なかでも新たな神経伝達物質として注目されているペプチド類の研究はここ10年来最も精力的に行われている。そこで、今回はペプチド類の心臓機能(調律と収縮)に及ぼす作用に焦点を絞り、我々の行ったイヌ心臓を用いての実験成績を基にして、薬理学的に考察してみることにした。