治療の目的は,疾患の治癒あるいは改善,患者のQOLの向上であることに異論をはさむ医師はいない。しかし,そのstrategyとなると話は違ってくる。実際の日常診療では,疾患によっては,医師の間で治療方針に大きな違いがみられる。とくに,専門性の高い領域で目立つ。そこで,種々の疾病に対して学会を中心に治療指針,いわゆる治療ガイドラインの策定が進んでいる。治療ガイドラインとは,一つの治療方針の目安を示すものと考えられている。しかし,手術や処置となるとガイドラインの策定は容易ではない。この理由として,医師の得意とする技術や分野の違い,技量の違い,評価法の違いが大きいと考えられる。同様なコンセプトで手術を行っても術者により治療成績に差が出ることは周知の事実である。放射線治療についても,同様なことが言えるのかもしれない。治療のoutcomeの評価に,患者自身の主観的判断に基づくQOL評価を取り入れていくことが広がっているが,癌治療でのQOL評価も容易ではない。もちろん,異なった方法でも治療のoutcomeが同じく良好であれば,方法に問題はない。そこにこそ医療の特異性があるのかもしれない。だが,治療の一般化も求められる。手術では技量が求められる以上,医師が切磋琢磨して自らの技量向上をはかることの必要性は言うまでもないが,効率良くトレーニングを積めば,良好な治療成績が得られるシステムを作っていくことは,これからの時代,とくに必要である。わが国では,各施設での症例数に限りがあり,またランダム化試験が難しいことから,治療方針の一般化を全疾患について広げていくことは容易ではなく,学習,実践,そして評価といったプロセスを繰り返していくことが求められる。