子どもの心理治療では予期せぬことがよく起こる。子どもたちは,大人の「こうなるだろう」といった想定をはるかに飛び越えて,治療者は毎日その波乱に巻き込まれる。そんな子どもの臨床において,著者がもっとも重要視しているのが「自由さ」である。既成の理論や知識をいくら学んでも追いつかないところは,結局,治療者自身の個性がもつ「自由さ」からくる変法である「その人なりの治療技法」を身につけ,治療するしかない。精神療法を志す者にとって,究極の目標は「自由になる」ことと言っても差し支えないのである。本書では,著者の臨床的工夫の一つである「家族−遊戯療法」の症例などをもとに,治療における「自由さ」とは何なのか,それを求める意義,そして「自由さ」を目指す道のりについてを示す。