本書はわが国初の本格的な「音楽療法ケース集」として構想された。執筆陣のなかには欧米に留学経験がある方も多く,今なお海外在住の方も含まれるが,すべて日本人の音楽療法士あるいは研究者である。自験ケースの紹介者として現在望みうる最高の布陣になったのではないかと自負している。異なる専門領域で仕事をする読者の便を図り,I巻を児童・高齢者・緩和ケア領域,II巻を成人の精神科領域とした。もちろんI・II巻を通読していただきたいが,まずは関係した領域を含む1冊を手に取っていただいてもいい。ご自分の関心や興味と照らし合わせながら,各章のケース記述に含まれる豊富な意義を汲んでいただきたいと願うものである。