この『発達障害の精神病理』シリーズは、精神病理学を中心とする関連領域の専門家が集い、議論を深めたワークショップの記録である。シリーズ完結を迎える本書においても、発達障害をめぐって鋭い考察が繰り広げられる。だが、精神病理学によって発達障害を探究することはむしろ、「普通」とは何か、社会性とは何か、言葉による相互理解とは何なのかといった、人間の精神の営み、その不思議さへの根本的な問いかけでもある。歴史が浅いながらも急速に広がった「発達障害」の概念に対し、各論考が多彩な光を当て、臨床の場にも新たな視野と多くの示唆を与えてくれる。