賛否両論の病気 こころとからだのはざまで

出版社: 中外医学社
著者:
発行日: 2024-04-10
分野: 臨床医学:内科  >  精神医学
ISBN: 9784498229587
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商品紹介

誰も教えてくれなかった“contested diseases”
「検査所見に異常はみられない」「自覚症状が非常に強い」「心理的な要因の関与が考えられる」といった疾患を目の前にしたとき,一方では「精神疾患であることの証明はない」「患者は身体疾患と考えている」「身体疾患を示唆する診断名も用意されている」とも考えられる余地があるのかもしれない.このように身体疾患と精神疾患のはざまでは,医学界の中で疾患単位やコンセンサスが十分に形成されていないものも少なくない.これらの曖昧な概念に対する解決策は未来に委ねられるが,その議論の萌芽は,我々が賛否両論の病気(contested diseases)を認識することから始まるのかもしれない.

目次

  • I.総論
     1 火中の栗を拾う─“contested illness”とは何か
      はじめに─医療不信から
      “Contested illness”とは
      不定愁訴─MUS,FSS,BDSを巡って
      不易の心身と医学の進歩─社会的に構成される医学知識
      “Contested illness”理解のための補助線─「病気」を巡る語彙
      おわりに─賢しらな人間,あるいは人智の限界から
     2 リエゾン精神医療の立場から
      はじめに
      リエゾン精神医療
      リエゾン精神医療におけるcontested illnesses
      Contested illnessが生まれる背景について
      おわりに

    II.疾患概論
     1 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候,全身性労作不耐症
      はじめに
      CFSの診断基準,特徴および症状
      CFSにおける身体的要因の関与
      CFSにおける心理社会的要因の関与
      身体的要因と心理社会的要因の相互作用
      CFSと身体表現性障害との鑑別
      CFS患者の評価
      CFS患者の治療
      おわりに
     2 線維筋痛症
      はじめに
      臨床症状
      FMの併存疾患
      FMの診断基準
      FMの病態
      FMに対する薬物療法
      そのほかの治療
      おわりに
     3 脳脊髄液減少症/低髄液圧症候群
      はじめに
      そもそも脳脊髄液減少症は存在しない?
      脳脊髄液減少症の理解を助けるため,身体表現性障害と診断されていた脳脊髄液減少症の少年の例を提示する
      交通外傷後脳脊髄液減少症のジレンマ
      脳脊髄液減少症の症状
      診断
      治療
      診断基準
      脳脊髄液減少症という疾患をどう捉えたらよいのか
      脳脊髄液減少症の精神面の関与について
     4 歯科領域の疾患
      はじめに─口腔領域の特徴
      疾患の概要─精神心理的関与
      疾患としてどう捉えるか
      捉え方を複雑化させる─医原性の側面について
      どう対応するか
      おわりに
     5 機能性ディスペプシア
      症状,検査所見,病理所見,転帰などからみて,身体疾患としてどの程度明確になっているといえるか
      精神面の関与はどの程度あると一般に考えられているか
      「機能性ディスペプシア」という疾患概念はあったほうがよいのか,ない方がよいのか
     6 総合診療の立場─MUS,FSS,BDSを含めて 
      総合診療科での典型的なMUS(medically unexplained symptoms)患者
      MUSは総合診療ではコモンな病態であるが,対応が難しい
      MUSおよび関連する診断名の複雑さのために総合診療医は混乱する
      総合診療医によりMUS診断には幅がある─本当に器質的疾患はないのか,“偽MUS”ではないのか
      MUSに心理社会面,精神面はどの程度関与しているのか
      総合診療領域ではMUSへはどのような対応が推奨されているか─WONCAによる推奨
      MUS患者に自身の症状に対する理解を促すための努力をすべきである
      医療の不確実性に対処する
      総合診療医である筆者によるMUS患者への説明
      症状が改善したMUSケースから考える総合診療医としての診療姿勢
     7 月経前症候群/月経前不快気分障害
      はじめに
      PMS/PMDDの歴史と診断
      PMS/PMDDの疫学
      PMDD専門外来を通しての印象
      PMS/PMDDの発症機序
      PMS/PMDDへの対応
      精神科に紹介すべき症例
      おわりに
     8 更年期障害 
      更年期および更年期障害とは何か
      更年期の卵巣機能
      更年期障害の症状
      更年期の心理的要因
      更年期障害の評価尺度
      更年期障害と精神疾患の合併
      更年期障害の治療
      おわりに
     9 起立性調節障害 神谷 俊介 
      はじめに
      起立性調節障害とは
      児童精神科医からみたOD
      おわりに
     10 多種化学物質過敏症─シックハウス症候群との関連を含めて 
      はじめに
      多種化学物質過敏症(MCS)の歴史と概念
      多種化学物質過敏症(MCS)の疫学
      多種化学物質過敏症(MCS)の発症機序
      多種化学物質過敏症(MCS)の診断
      多種化学物質過敏症(MCS)に必要な態度と治療のポイント
      おわりに
     11 複合性局所疼痛症候群(CRPSI)
      はじめに
      慢性の痛み
      病名とは?
      病名の意味
      痛みの責任の所在
      CRPSという疾患の存在に関する議論
      CRPSという病名に関連した印象に残る症例
     12 持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)と良性発作性頭位めまい症(BPPV)
      はじめに
      PPPDについて
      鑑別疾患
      治療と予後について
      PPPDは心因性疾患なのか
      BPPV(良性発作性頭位めまい症)について
      症状と診断
      BPPVからPPPDへ
     13 緊張性頭痛と片頭痛
      片頭痛
      緊張型頭痛
     14 Long COVIDおよびコロナワクチン
      はじめに
      Long COVID
      コロナワクチン後遺症
     15 HPVワクチン接種後に生じる多彩な症状:ISRRとHPVワクチン関連神経免疫症候群
      HPVワクチン接種後に生じる多彩な症状の経緯
      HPVワクチン接種後にみられた多彩な症状およびその報告数と頻度の変遷
      HANS─その診断基準と調査結果
      ISRRの病態解釈
      ISRRからみたHANS
     16 その他の気になる疾患
      はじめに
      機能性高体温症/心因性発熱
      泌尿器学的慢性骨盤痛症候群
      舌小帯短縮症
      副腎疲労
      おわりに

    あとがき 慢性ライム病をめぐる断想

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