「EBM・根拠に基づく医療」が提唱されて久しい。何故今更EBMかという議論も多くある。かつての歯科医療は、経験科学や裁量権が主体で、医療技術の評価も確実な基準の策定ができなかった。現在流行語のように使われている歯科医療のなかで、EBMの見直しを多くの識者達から視的されている所以でもある。Gyatt、G.H、Sachett、D.Lらの概念を日本式に纏めるならば、EBMは次の三点に要約できる。第一は、最良な利用可能な臨床研究資料の集積であり、第二は、患者の価値観及び意向であり、第三は臨床上の専門技能の活用である。これらの三要素が混在し、統合されて初めて、EBMの実態が解明され、理解されるものと思われる。とくに歯科医療においては、臨床技法に重点が行われ、学問体系のなかに「学」でなく、「術」の部分が多く含まれていた。これらをEBMのなかで、どのような形で進展させるのかを取り挙げたのが本書の大きな特徴である。(「はじめに」より)