1960年頃に発見された「オートファジー(自食作用)」は,1990年代の酵母遺伝学的研究を契機に,その分子機構と生物学的意義の双方において急速に理解が進み,研究者も増加している。しかしその一方,オートファジーに伴う膜動態やタンパク質代謝の複雑さ,そこに関わる分子の多さ,オートファジーを評価する実験方法の不足などから,オートファジーを正しく理解することは大変困難である。そこで本書では,最近の知見のみにとらわれることなく,これまでの確実な研究を十分に含めることによって,オートファジーを総合的に理解することを目的とする。