時代の趨勢は静かに関係精神分析の方向に向かっている。さまざまな学派やさまざまな立場を代表する臨床家たちから異口同音に聞こえてくるのが,治療とは結局は関係性であるということだ。どのような技法でもカバーしきれない,あるいはそれを包み込むように存在する関係性のファクターこそが精神分析の中核に存在するのである。本書で扱う自己開示,倫理性,現実は,その分析空間におけるリアリティを考える際の各論とも言うべきテーマである。それぞれの著者がそれらをどのように料理しているのか,どこか共通して,どこに個性が現れているかを一読して感じて欲しい。