骨盤・股関節・鼠径部のスポーツ疾患は,近年,注目度が増し,学会などでも発表が増えてきている。骨盤輪不安定症は,明らかな構造的異常を検出する検査法が確立されておらず,客観的な診断法が確立されていない疾患概念といえる。一方,股関節疾患については,大腿骨寛骨臼インピンジメントという疾患概念が提唱され,MRIや関節鏡による関節唇損傷,関節軟骨損傷の病態が解明され,急速に診断と治療が進歩しつつある。また,鼠径部痛症候群は,サッカーが盛んなヨーロッパを中心に注目されてきた疾患概念であるが,症状が多彩・広範囲に及び,そのメカニズムは十分に解明されていない。このように,まだまだ医学的に確立されていない面もあるが,この時期に包括的にレビューすることで,今後の研究を加速する一助になることと思われる。